トップ > プロが教えるカーケア道場 > 汚れのメカニズムと落とし方 > 【ウォータースポット・イオンデポジット】付着のメカニズムと取り方

【ウォータースポット・イオンデポジット】付着のメカニズムと取り方

ウォータースポット・イオンデポジット付着を徹底検証 ダメージを受ける原因・メカニズムと修復方法を知る

塗装上ではこうなっています 【イオンデポジット】

水が乾いた痕が洗車しても全く取れないウォータースポット・イオンデポジット。
一度付着するとさらにダメージが進行する厄介者です。

ちなみにウォータースポットは総称です。 平たく言うと水の痕なのですが、その状態によって付着しているだけの時もあったり、凹んでいる時があったり様々です。
まず付着しているだけの物はイオンデポジットとか呼ばれ、ボディ面に付いた水が蒸発した際に水の中に含まれる成分(様々なイオン分等)が残った残留物。 一応、上の画像とイラストが、イオンデポジットのイメージ図となります。 その残留物が水のあった場所にクッキリと痕を残してこびり付くとイオンデポジットになります。 雨が降ったりした後に水が乾くのは、車両を使用する上でどうしようもないことですが、大抵は普通に雨が蒸発しただけではそんなにひどい状況までなる事は少ないです。
ですが、雨の水分中に含まれるイオン分等の含有量が多かったりした際に、一気に高温で焼かれたりするとガッチリこびり付くことが多いようです。 水分中の成分と、高温がキーポイントとなりイオンデポジットが付着しやすい状況になります。 一般的に雨よりも水道水の方付きやすく、水道水よりも井戸水の方が付きやすいです。 お家のお風呂場や水回りをご覧いただくと分かるのですが、普段水分を拭く事が少ない場所は結構イオンデポジットが付いていると思います。 また、ボディ面が高温になりやすい白い車より黒い車の方が付着率は高くなります。 後、黒い車はイオンデポジットが見えやすくもあります。
これらを考えた時に、夏場の黒い車の洗車時などは結構付着確率が高いと言えます。 夏場の洗車後に炎天下の下で自然乾燥などをやってしまうと大抵一撃で付きます。
それでも、これは初期の段階でこれが進行してくるとなかなか厄介になります。 一度ガッチリ付着してしまうとイオンデポジットのダムが出来、次の機会に水が付いた時には必ずそこに溜まるようになってしまいます。 そしてさらに高くて丈夫なダムを蓄積していき段々と進行してきます。
ちなみに、付着してしまうと軽い物ならば洗車で落とすことも可能ですが、完全に焼けてこびり付いてしまうと普通の洗剤では落ちません。

塗装上ではこうなっています 【クレーター】

イオンデポジットが進行してくると次はこちらの形になります。 上の左側の写真は少し見づらいのですがイオンデポジットが進行してきて、塗装表面がクレーター状になってしまった状態です。 上の右がイメージ図ですが、一度イオンデポジットが付着してしまうと、次からイオンデポジットの内側に水がたまるようになり、どんどん浸食されていきます。 
毎回必ずそこで水が蒸発するわけですから、他の部分に比べるとそこだけ局所的に熱が加わりやすく、水蒸気や凝縮されたイオン分等の影響を受け、塗装が収縮したようになり縮んでいきます。 また、酸性雨の影響もそこだけ局所的に被害が大きくなり、ひどくなると陥没したクレーター状になってしまいます。 これをさらに進行させると、塗装に割れが生じたりして取り返しがつかなくなってしまい、再塗装しか手がなくなってしまいます。

ウォータースポット・イオンデポジットの原因は様々なイオン成分!

そもそもの原因は、すべてボディ面で乾く水分中の成分が原因です。 まず、軽くイオンデポジットが付着し、そして蓄積していき、やがてイオンデポジットが進行してボディ表面が凸凹のクレーター上になったウォータースポットになります。
雨であったり水道水であったり、井戸水であったり、車のボディに付く身近な水は純水ではないので、すべて何らかのイオン分を含んでいるものです。 また、ボディの表面温度が高くなる黒系の色ほど水が乾きやすく付着確率は多くなります。
それから、ボディ面に付いた水が、溜まった位置から動かないで乾いた時に付着しやすく、常に乗られているお車よりも、常に置いてあるお車の方が付着しやすいと言えます。 ちなみに、水にイオン分が含まれていなくても、ボディ側に既に埃や汚れとしてイオン分が乗ってある場合は、当然ながら付着する可能性はあります。
状況や環境で付着するプロセスや現象も様々ですが、これらはすべて水分中や空気中のイオン分が原因と言えるでしょう。
ちなみに付着する場所は、ガラス・ボディ・モール等場所を問わず付着し、もちろんコーティング被膜の上にも乗ります。
また、撥水性コーティング・親水性コーティング、共に付着条件は同じですが、どちらかと言うと撥水性の方が水玉になりますので、見えやすくはなります。 ことウォータースポットの付着においては、完全親水性なら良いのですが、中間的な弾きをするコーティングではあまり撥水性のコーティングと比べて大差ないように思いますので、お好みの水弾きを選ばれた方が良いかと思います。 また、状況によってですが、普段乗られるお車なら若干の水弾きはあった方が、水が留まらずに良い方向に出る場合もあります。
後、ウォータースポットの原因、よく耳にする、水滴がレンズ効果で云々というのは、ごく一部の稀な状況で、基本的には上記のようなメカニズムで付着します。

ウォータースポット・イオンデポジットを除去するには

【分解除去か磨いて取るか】
ウォータースポットの除去方法として、ウォータースポット除去剤での除去、ポリッシングリキッドで磨いて除去、の2通りの方法があります。
程度にもよりますが、軽度のイオンデポジット状態だと、ウォータスポット除去剤で分解除去した方がボディを擦らずに除去できるため、より楽にやさしく除去出来ます。  ある程度蓄積した状態だと分解しきれないケースもあるため、何度か除去剤で分解した後、ポリッシングリキッドにて磨くという二段構えで臨めばより確実に除去できるのではないでしょうか。
クレーター状態まで進行してしまうと、表面の突起している部分は除去剤やポリッシングリキッドで取れますが、クレーター部分はポリッシングリキッドでないと取れません。 要は、凹んだ部分は磨いて取ってしまわないといけないわけですが、手磨きでクレーターを取ってしまうのは至難の業かもしれません。 それでも突起している部分のデポジットの除去と、クレーター部分を多少ましにするだけで、見映えはかなり変わってくるでしょう。

(ウォータースポット除去剤での除去作業)

※ こちらの動画は無音です。

今後の対策を考える

【極力付着させない方向へ】
付着を完全に未然に防いでしまうのは状況により至難の業なので、もし付着したら軽度の状態で処理をしてしまうことが何よりの防止対策になります。
極力洗車等の頻度を増やし、洗車時の水分をしっかりと拭きとって(かけた水を乾かさない)イオンデポジットの付着を可能な限り防ぐ。
ボディ面をカラカラの状態にしない事が重要。 油性の成分を含むコーティング皮膜はウォータースポットの効果的な保護被膜になります。 保護膜の持久力自体はそんなに高くない物が多いのですが、メンテナンス用のトリートメント等がこれにあたり、適度な掛け替えが大変有効です。
一番良くないのは、メンテナンスフリーのようになっているコーティング加工のボディ面を何もしないでカラカラの状態にすることです。 耐久性の高い、ガラス系のコーティングを施工したお車にこういう現象が多く、必ずしも長期間のコーティング持続=付着物防止とはならず、付着物にはそれ用の対策が必要、という認識を持つことが大切なのかもしれません。

合わせて読みたい

スクラッチ【洗車キズ】のメカニズムと消し方

スクラッチ【洗車キズ】のメカニズムと消し方

スクラッチ(洗車キズ)を徹底検証 ダメージを受ける原因・メカニズムと修復方法を知る

夜、ライトでで照らされたり、太陽が燦々と降り注ぐ下でギラギラ見えるスクラッチ。車のボディはこのスクラッチが少ないほど、光沢が高く反射率が高く、映り込みが綺麗に見えます。 太陽の周りに丸くキズが見えていると思います。 WAXを掛けるときスポンジを円状に動かして行くとこういうキズが入るのだ、と、見え方から思いがちになりますがが、実はたいていのキズは直線なのです。 太陽の周りや、明かりで照らされた周りが際立って見えるためこういう見え方になります。また、キズは塗装表面で乱反射して目立つため、その数が多いほど光沢も低くなります。 キズが少ないと乱反射が少ないため、光沢・反射ともにより鏡面に近くなり、綺麗に見えるようになります。 塗装を鏡面にする、磨き作業とはキズを消す事です。カーケアショップやコーティング施工店で行う鏡面加工とは、すなわちスクラッチ除去作業と言っても良いでしょう。キズは、塗装の表面が切れた状態になっていますので、光が乱反射され色的に言うと白く見えます。 上のイメージ図で言うと谷の部分が切れた箇所、上の左の写真ではキズが白く乱反射しているのがよくわかると思います。 色のコントラストの関係で、色が濃い車ほど傷が目立つのはそのためで、逆に言うと色の淡い車はどちらかというとあまりキズは目立ちません。後、クリアがあるのとないのとでも見え方が違います。 例えば黒の塗料に直接キズが入って乱反射する場合はより目立ち、クリア層にキズが入って乱反射する場合は、透明であるクリアにキズが入り、その下に黒の層がある形になるので、多少見え方が変わってくるのです。

【ガラスの油膜】汚れのメカニズムと取り方

【ガラスの油膜】汚れのメカニズムと取り方

窓ガラス油膜・汚れを徹底検証 ダメージを受ける原因・メカニズムと修復方法を知る

雨天時の夜間走行にギラギラし、対向車のヘッドライトが乱反射して視界を妨げてしまいます。ガラスに付く油膜は、晴れた日にはそんなに気にならないものですが、雨の夜などにフロントガラスに付いた油膜が対向車のライトなどで乱反射して視界を妨げて危険です。  一旦こびり付くと自然に取れることはなく、どんどん蓄積していく一方になりますので定期的に取ってあげる必要があり、ガラス面への付着のイメージとすれば湯呑等に付着する茶渋みたいな感じでしょうか。 また、ウインドウの撥水コーティングを施工する際に、ガラス表面に油膜が残っていると撥水コーティングがうまく定着してくれないので、下地処理として油膜を除去する必要があります。 よく、ガラスに付く鱗(ウォータースポット)と混同されがちですが、油膜はあくまでも油膜であって、ウォータースポットと付く原因が違います。 ウォータースポットは油膜除去剤だけでは落としきれないことが多いので、ウォータースポット専用のクリーナーを使用する必要があります。 特にフロントガラスは、そのお車を所有している方が一番見るところです。 例え車のボディ自体はピカピカでも、運転席から見える視界がスッキリする事で気持ちも良いですが、モヤモヤ・ギラギラしているとテンションが下がってしまいます。常に視界までスッキリしておくことが、より気持ち良いカーケアの一つのポイントではないかと思います。